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要件事実論:買った鉢植えのつつじに害虫、代金返還請求権主張前の売買契約成立根拠事実の主張方法

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 Aが生花店でBから鉢植えのつつじを買ったら、そのつつじに害虫がついていた。
 代金返還請求権の発生要件が充足されるように、主張せねばならない。
 まず、前提としての売買契約が成立していることの主張をすることになります。

 以下、説明をしていきますが、代金返還をAが主張することに、売主Bが反論してきます。
 その反論によって、売買契約の成立の事実の主張も、有効なものにすることが求められます。


<売買契約が成立したことを根拠づける具体的な事実の主張の仕方>

? Aは、平成24年4月22日、Bから代金3,000円で鉢植えのつつじ1鉢を買った。
? 平成24年4月22日、AとBの間に、AがBに対し代金3,000円を支払い、BがAに対し鉢植えのつつじ1鉢の所有権を移転する旨の契約が成立した。
? 平成24年4月22日、AがBに対し代価3,000円の鉢植えのつつじ1鉢を買い受けたい旨の意思表示をし、BがAに対しこれを承諾する旨の意思表示をした。
? 平成24年4月22日、AがBに対し「これをください」と言って代価3,000円の鉢植えのつつじ1鉢を買い受けたい旨の申込みをし、Bが「有り難うございます」と言ってAの申込みを承諾した。
? 平成24年4月22日、Aが生花店の店先に陳列されている代価3,000円の値札が付いた鉢植えのつつじ1鉢を指差しながら店主のBに対し「これをください」と言い、Bが「有り難うございます」と言った。


同じようなことをいっているが、それぞれ違う。

******************

? Aは、平成24年4月22日、Bから代金3,000円で鉢植えのつつじ1鉢を買った。

? 平成24年4月22日、AとBの間に、AがBに対し代金3,000円を支払い、BがAに対し鉢植えのつつじ1鉢の所有権を移転する旨の契約が成立した。

 A,Bの各意思表示の内容を具体的に表現することなく、ABの意思表示の合致により成立した契約の内容の記述。

 ?と?の違いは、成立した契約の表現の仕方の違い。

 ?は、通常人の日常用いる言葉で表現。

 ?は、民法の売買の規定(民法555条)に忠実に表現。

 ?、?は、契約が成立したという結果のみの記述であり、ABいずれが申込みの意思表示をしたのかはわからない。特に?では全く不明。

⇒いずれの当事者が契約締結の申込みをしたのか、いずれの当事者のいかなる言動によって契約が成立したのかが争点である場合は、適切でない。

*******************

? 平成24年4月22日、AがBに対し代価3,000円の鉢植えのつつじ1鉢を買い受けたい旨の意思表示をし、BがAに対しこれを承諾する旨の意思表示をした。

? 平成24年4月22日、AがBに対し「これをください」と言って代価3,000円の鉢植えのつつじ1鉢を買い受けたい旨の申込みをし、Bが「有り難うございます」と言ってAの申込みを承諾した。

? 平成24年4月22日、Aが生花店の店先に陳列されている代価3,000円の値札が付いた鉢植えのつつじ1鉢を指差しながら店主のBに対し「これをください」と言い、Bが「有り難うございます」と言った。


 ?〜?は、いずれもAが売買契約の締結の申込みをし、Bがこれに承諾することによって売買契約が成立した旨を表現している。

 ?は、生の事実(Aが「これください」と言い、Bが「有り難うございます。」と言った事実)を記述するのではなく、その事実がもつ法律的な意味を解釈し、その結果認識された一定の意思表示の内容を抽象的に表現している。

 ?は、生の事実を記述するとともに、その事実がもつ法律上の意味を説明している。

 ?は、生の事実をそのまま記述するだけで、その事実が法律上どのような意味をもつか説明をしていない。
 (ある事実が法律上どのような意味を持つかは法律の適用の問題であって、当事者の主張をまつことなく、また、当事者の主張に拘束されることなく、裁判官が行うことに属するから、?のようにそれを説明しなくても差支えがないが、?のように説明することがゆるされないものではない。)


*******************

<相手方Bの争い方>

ア AB間の契約の締結を否認し、「Aはその日には店に来ていない」とか、「当日Aは店に来たが、自分と話していない」と主張

イ 代金額を否認し、「Aが指差したつつじの鉢についていたのは「¥2000」という値札であり、BがAから受け取った代金も2000円であった」と主張する場合

ウ「Aは他人の代理人であり、その他人のためにすることを示して売買契約の締結の申込みをし、Bはその他人のためにすることを示して承諾の意思表示をした」と主張する場合

エ Aが買ったつつじが害虫にやられて病気にかかっているとの事実を否認して争う場合

オ Aの代金返還請求に対し、売り渡したつつじの鉢の返還との引換給付の抗弁を提出する場合


*******************

<相手方Bの争い方に対し、買主Aは、売買契約の成立を根拠づける具体的な事実の主張は、上記?〜?のいずれが適切か>

エオの場合

売買契約の締結の事実は、AB間に争いがなく、それを前提に、エつつじが害虫にやられていたこと(売買の目的物の隠れた瑕疵)、オつつじの鉢の返還を受けるまで代金の返還債務の履行を拒絶すること(同時履行の抗弁)が争われる場合には、Aは、自己が行使する請求権の発生根拠がわかる程度に主張すれば足りる。

⇒?や?で足りる。(?〜?のような必要性も、実益もない)

ア 「AとBが当日会ったか、話をしたか」が争点、
イ 生花店の店先に展示されていた商品の値札がどのようにつけられていたかが争点

⇒?、?のように、より具体的な記載がいる。


ウの場合

AB間に売買契約の締結の合意があった事実には争いがなく、ただ、Aの意思表示が自己に法律効果を帰属させる趣旨のものであったのか、それとも他人に法律効果を帰属させる趣旨のものであったのかが問題となる。

ABの売買契約締結の合意を形成する意思表示そのものについては争いがあるわけではないから、その意思表示の内容を具体的に詳細に主張する必要はない。

以上

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