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Channel: 「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog
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医師と患者の信頼関係構築3:医療慣行は、医療水準を意味しない。医療慣行に従ったとしても過失あり。

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 医療慣行は、医療水準を意味しません。

 小児科医療でいえば、医療慣行として「熱の時に抗生剤を投与する」ということが安易になされているとしても、「抗生剤は適正使用する」ということが現在の小児科学の医療水準であるため、抗生剤を安易に投与され副作用が出た場合、医療慣行を言い訳にすることは、投与した医院はできません。


1)医療水準とは、医療過誤事件において、過失における注意義務違反の基準となるものです。

 
 過失における注意義務違反=当該行為者が注意をすれば、結果の発生を予見でき、
              結果の発生を回避することができたのに、
              注意を尽くさなかったために、結果の発生を予見せず、
              結果の発生を回避するための措置を取らなかったこと。


2)判例によって形成・確立された医療水準の判断枠組み

 ?医師の注意義務の基準となるのは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である。

  ⇒医学研究の水準ではない。新規の治療法の場合に要検討。


 ?医療水準を判断するにあたっては、当該医療機関の性格(病院か開業医か、大学病院か)やその所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮する。

  ⇒具体的に検討を。


 ?医療水準の基準となる知見は、当該医療機関に期待することが相当と認められる知見。

  ⇒知見(情報)の普及と、医療従事者の研鑽。


 ?知見を有しながらも治療法実施の技術・設備等を有しない場合には、他の医療機関へ転医させる等の義務がある。

 ?平均的医師が現に行っている医療慣行に従ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたことにはならない。


3)医療水準論の課題

 ?医療水準の確定の困難性、証明の困難性

 ?医師の免責のために機能する可能性

 ?一般的な医療水準と個別具体的な検討の橋渡し

以上

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