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民訴1:移送の申立てを受けて、移送の当否の判断

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事案:
 X3および両親X1,X2から原告らの住所地(義務履行地)の奈良地方裁判所に提起された訴訟を、病院所在地(不法行為地)かつ被告の普通裁判籍所在地の裁判所へ移送するよう申立てがなされており、法的判断が求められている。

問題となる条文:
 民訴法17条

(遅滞を避ける等のための移送)
第十七条  第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

どの要件の解釈適用が問題となるか:
 「訴訟の著しい遅滞を避けるため、必要があると認めるときは」とは、どのようなときを指すかが問題。

ひとつの考え方:
 「当事者間の衡平」を考慮して判断するべきとの見解

上記考え方をとらない理由:
 原告の負担ももちろん大事であるが、原告は訴えを提起した側であり、その負担も十分にわかって提起しているわけである。

 当事者間の衡平の問題を、他の制度、本件の場合は、法律扶助制度などを用いることで解決もしくは軽減できるのであれば、「訴訟遅滞」の回避に重きをおいて、移送の要否を判断すべきと考える。


他の考え方:
 「訴訟遅滞」と「当事者の衡平」を、事案において総合的に比較衡量のうえ検討し判断すべきと考える。

 本件の場合は、ほとんど全員が鹿児島市か宮崎市に在住の担当医師、看護士、保育士らの証人尋問及び熊本県在住の鑑定人の尋問が申請され、保育器など現場検証の申し出もなされている。

 訴訟遅滞の主要な要因となる証拠調べの手間や証人の負担を考慮し移送の是非を判断すべきと考える。

 従って、裁判所は、申立てを受け、鹿児島県地方裁判所又は、宮崎地方裁判所へ移送すべきである。

 鹿児島地方裁判所とするか宮崎地方裁判所とするかは、証拠調べの際のより重要な証拠のある場所、本件であれば、どの地点が、失明における原因としてより重要であったかで判断すべきであると考える。

 あるいは、鹿児島地方裁判所と宮崎地方裁判所にそれぞれ事件の分離をするという方法もありうる。

以上

大阪高決昭和54年2月28日(百選1−34)

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